リクルートブライダル総研は、結婚に関する調査・研究、未来への提言を通じて、マーケットの拡大と社会課題の解決に取り組みます。

今後、業界で活躍する人材像は、どのように変わっていくのか?

鈴木
ウエディングプランナーのキャリアという意味でも、今後どのような人材が活躍していくのか、また、優秀な人材の新たな活用スタイルがあるとすれば、それはどのようなものだとお考えでしょうか?
石渡
1年目のプランナーよりは10年目のプランナーが必要になってくるのではないかと思います。それは単に新人がダメということではなく、現状のブライダルの傾向を見ると「おめでた婚」が多くなってきているからです。もちろん、最初から「おめでた」が分かっていて申し込まれるケースは1割から2割ですが、今のおめでた婚は、結婚式よりも先に入籍し生活をスタートさせる人たちが増えたため、結婚式までに「おめでた」となるわけですね。結果としてのおめでた婚が4割にものぼるホテルや式場もあるようです。ですから、妊娠・出産を経験していたり、子育ての経験のあるプランナーの方が、新郎・新婦への説得力があるという構図です。
池田
業務請負のスタイルでやっている「フリープランナー」の存在も気になりますね。ただ「フリー」と名がつくだけでホテルとのトラブルが多いということで「お断り」になっているケースも少なくありません。「フリーランス」の定義が広すぎるのも問題だと思いますね。自ら名乗って手を挙げれば誰でも「フリー」と言える、ではダメで、本来は「クリエイティブ」とか「スペシャルな技能」という実質が伴っている人を創るためのものでなければなりませんよね。しかも、自分でお客様を開拓できるレベルの人は、ほんの一握りだけですし。
鈴木
日本のサービス業界は生産性が悪いと言われています。それは、良いサービスをお金にできない点です。ブライダルに置き換えて言うならば、プランニング料がインクルードされていて、特別なフィーが明らかにされにくい土壌があります。たとえば、会場ごとに専属でやっているフリープランナーがいて、その方に任せたいならばプラスアルファの料金がつくことを明確にしていけばいい。そうしていかないと、キャリアを活かしたいプランナーはその先の働くスタイルが見えてきませんよね。
池田
ある事例ですが、地方自治体が持つ営業力をバックに、地域に根差したプランナーを活用していくことがあります。地域の特性を熟知したプランナーが、地方自治体と組んでオリジナルなプランニングをしていくケースです。この場合も、そのプランをプロデュース料にするのか、単なる会場使用料としてしまうのかによっても、プランナーの価値が変わってしまいます。本来は、プランナーそれぞれによって、その価格価値を変えるべきだと思います。つまり、プロデュース料を変えるべきだと。この人だから「いくら」になっていかないといけない。そのためには、フリープランナーの人こそ、セルフブランディングを強化すべきだと思います。デザイン力やセンス、マーケティング力、相手に強いなど、何か秀でたものを持ち、かつ、もう一つの武器も使える。2つの強いスキルがあるのが望ましいですね。
石渡
私は「NOと言える」ことが大切なのではないかと考えています。プランナーであれば、お客様のご要望を100%満たせばよいのですが、これからは120%を提供することができないと。そのためにもお客様のご要望に「NO」を言えるプランナー。お客様から「あなたの言うことだったら信用できる」と言ってもらえるプランナーを目指すべきではないですかね。かつて存在していたブライダルマザーのような要素を持ち合わせ、パーティとしての楽しさだけでなく、本質的に結婚式に求められることを実現できる力が必要だと思います。

今後、業界向けメディアに求められる役割はどう変化し、何にチャレンジしていくのか?

鈴木
ここまでのお話にもあった様々な課題や危機感を抱える中で、業界向けメディアとしての役割はどのように変化していくとお考えですか?そのためにチャレンジしていきたいと考えられていることがあればお聞かせください。
石渡

▲The Professional Wedding 編集長
 石渡 雅浩 様
私はもともとホテルマンだったこともあり、ホテル業界内の活発な交流を経験しています。ホテルのフロント業務においては、不審者などの出入りについて情報交換することが犯罪防止につながったり、オーバーブッキングの際のカバーなどの実効性も高まります。それに比べるとブライダル業界には、こうした業界内の交流さえ少ない。特に人事に関わる人たちの交流が無い業界でしたね。私たちの会社でもこうした風潮を打破するためにも「交流会」や「ランチ会」という機会を提供してきました。現場の方々からはとても好評で、情報の共有化や業界内制度の整備も進めていきたいとのご要望もいただいています。
池田
ブライダル業界というのは、業界意識が強いというか、外との接点が少ないと感じています。「村化」しているイメージです。もっと業界外との連携やコラボレーション的な動きが出てくるサポートもしていきたいと考えています。花嫁というキーワードで繋がる美容業界との提携、料理やクッキングスクールとの連携などライフスタイル産業とブライダル産業をどう結び付けていけるのか、これは「文化」を創っていくイメージで取り組まなくてはなりません。まさに、これからのチャレンジだと思います。そのためには、ブライダル業界自体が、コンプライアンスや労働基準法の問題など、業界外からの指摘に応えていく姿勢が必要です。そうすることで、業界外からブライダル分野へのアプローチを促進し、外から中への刺激が増えていくことが望ましいですね。同様に、業界内から業界外への発信力も高めなくてはなりません。
鈴木
確かに業界内だけでは自助作用しにくいですし、業界外から様々なご指摘やご意見を言われ始めている今こそ変わるチャンスなのかもしれませんね。
石渡
ブライダル産業は、就職を目指す学生から見れば「人の幸せをつくる」あこがれの職業です。それが就職後、現実の壁や忙しさによって志なかばで退職するというのはとても残念なこと。ウエディングプランナーのやりがいというものをもっと長いレンジで形成できるようにしなければなりません。たとえば、「記念日レストラン」という試みには新たな仕事の価値観を生み出す可能性を感じます。それは、結婚式が完成品だった仕事のゴールから、自分の手がけた結婚式から、どのような家族が生まれ、絆が出来ていったのかという「その後」に関わることで、プランナーにとっての新しいやりがいの創出に結びついていると思います。これは「自分が幸せに働く」というとても大事なことを思い出させてくれる意味でも、必要な取り組みだと感じています。
鈴木
結婚式ビジネスをコアにして周辺ビジネスへ広げていくことは、事業の広がりはもちろん、働くスタッフのモチベーションや力量のアップにもなりますね。新しいやりがいの創出こそ、働き方改革の本質だと思います。ブライダル業界の未来を描くために、様々な視点からのご意見をいただき誠にありがとうございました。

(文・写真/西山俊哉)

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